「人を想う」組織は、なぜエンゲージメントが高いのか。理念を行動に変える組織づくり

株式会社ダイブグループ

右・株式会社ダイブグループ 執行役員CHRO 佐々木さん
中・株式会社ダイブグループ ダイブローカル 地方創生事業 貴舩さん
左・株式会社ダイブグループ ダイブ 観光事業 矢口さん

営業職の8〜9割が未経験からスタートし、学歴も問わない採用を行いながら、高い従業員エンゲージメントを実現している 株式会社ダイブグループ。リゾートバイトをはじめとする観光インフラに特化した人材派遣・紹介事業、地方創生事業を展開する同社では、なぜ多様な人材が組織に根付き、若手も高いパフォーマンスを発揮できるのでしょうか。

人事の立ち上げから制度設計を牽引してきた取締役の佐々木さんと最前線で活躍する現場社員お二人への取材から見えてきたのは、理念を現場の行動にまで落とし込む「人を想う」組織づくりでした。その仕組みと実践から、エンゲージメントを高めるヒントを紐解きます。

目次

エンゲージメントの土台にある「人を想う」という価値観

前半は、株式会社ダイブグループ 執行役員CHROの佐々木さんにお話を伺います。

株式会社ダイブグループ 執行役員CHRO 佐々木さん

──採用や人事制度の中で「人を想う」ことを大切にされていると伺っていますが、その根底にはどのような思想があるのでしょうか。

佐々木さん:大前提として、私たちはダイブグループのビジョンである「誰もがジブンの人生を愛せる世界へ。」を何よりも大切にしています。「人を想う」という姿勢は、このビジョンを実現するための重要要素の一つという位置づけです。

ビジョンを実現するためには、まず社員一人ひとりが幸せであり、ある程度満たされていることが不可欠だと考えます。成長実感、働きやすい環境、十分な休日、納得のいく給与など、何によって満たされるかは人それぞれあるでしょう。

その中でも、特に助け合いと幸福の相関関係は大切にしています。誰かに優しくされたり助けられたりした原体験があるからこそ、「次は自分が誰かの役に立ちたい」「恩返しがしたい」という想いが自然と湧いてくるものです。ダイブグループで先輩が後輩を導く姿も、その一つでしょう。こうした一人ひとりの助け合いの輪が広がっていく感覚が重要だと考えています。

──自分を犠牲にして他人に尽くすのではなく、「自分が満たされているからこそ、他者に貢献できる」という順序なのですね。

佐々木さん:そうですね。「自分を満たすこと」と「他者への貢献」は巡り巡って循環するものだと考えています。

誰かに貢献したいと思い、自ら挑戦して成長する。その結果として相手に大きな価値を提供でき、「ありがとう」と感謝される。その手応えが、また自分自身を満たし、自分の人生を愛せるようになっていく。そんな良い循環をつくることが、ダイブグループの考える組織づくりの理想です。

──その考え方は、実際の採用にどう反映されているのでしょうか。

佐々木さん:私が人事部を立ち上げた2018年当時、一貫した採用の軸として「人を想える人」を採用ポリシーに据えました。もちろん、最優先はビジョンへの共感ですが、そのうえで人を想えて、人のために成長できる人間かどうかを見極めています。

これは、当社の事業にも大きく関係しています。

主軸事業であるリゾートバイトは、スタッフの方々にとって、住む場所も人間関係も一気に変えるチャレンジです。現場で壁にぶつかるスタッフの方々に対して、商業的な割り切りではなく、打算なしで心から「人の力になりたい」と思える人間性が当社の社員には求められています。

ただ、ここで言う「人を想う」は、単なる優しさとは異なります。

──具体的には、どのような違いがあるのでしょうか。

佐々木さん:優しい人は一見、人想いに見えます。しかし、「感謝される自分が好き」といったように、矢印が自分に向かっている場合もあるのです。また、本当に人のことを考えるのであれば、相手の成長につながる場合には本気で叱ったり、率直な意見を伝えたりすることも必要ですよね。

私たちが求めているのは見えないところで誰かのために動ける誠実さ、そして相手の未来や成長を考えたときに嫌われることを恐れず、厳しい現実も素直に伝えられる覚悟。つまり、「人を想う」とは、相手にただ優しくすることではなく、相手の可能性や成長に本気で向き合うことだと考えています。

採用のゴールは入社ではなく、入社半年後

──採用選考では、それをどのように見極めているのでしょうか。

佐々木さん:実は、面接では志望動機をあまり聞きません。それよりも過去の原体験やバックグラウンドから、その人の関心が「自分」に向いているのか、「他者」に向いているのかを時間をかけて掘り下げます。

たとえば、「人生最後の日に何をしたいか」という問いに対して、自分を満たす選択をするのか、周囲に感謝を伝える選択をするのか──そうした究極の場面で、その人が大切にしている価値観を見ています。価値観さえ合っていれば、志望動機は必要ないと思うのです。

もう一つ大切にしているのが、「採用のゴールは入社式ではなく、入社半年後、『ダイブグループに入って後悔していない』という言葉を全員からもらった瞬間が本当のゴール」という考え方です。

入社前に、酸いも甘いも含めてリアルな現場の課題をすべて開示します。入社してから「思っていた会社と違った」ということがないよう、良い部分のみならず大変な部分もあえて伝えます。そして、入社後半年間は心理的安全性を担保しながら、人事との面談で本当の声を聞きます。

採用の段階から入社後の活躍・定着までを一つのプロセスとして捉えることで、会社と社員の間にあるギャップをできるだけ小さくしているのです。

「人を想う」を、評価する仕組みをつくる

──採用で見極めた価値観は、入社後の評価にも影響しているのでしょうか。

佐々木さん:はい。評価制度においても、「人を想う」を明確に定義づけており、役職や年齢に関わらず、全社で匿名による360度評価を実施しています。

自己保身せず、仲間の成長のために時には厳しいことでも素直に伝えられるか、そして自己中心的なマインドではなく、利他的なマインドへと成長できているか。そうした部分を、上司だけでなく同僚や後輩など、さまざまな立場の人から匿名で愛のある採点とフィードバックをもらいます。

──成果だけではなく、周囲との関わり方も評価するのですね。

佐々木さん:短期的な業績成果は賞与で還元しますが、月給や等級については「人を想い、お客様を想い、仲間を想って挑戦しコミットしているか」という本質的な行動プロセスを重視しています。

どれだけ数字を上げたとしても、自己中心的であったり、仲間を蔑ろにしたりする人は上がれません。周囲から見ても社内外で関わる人のために頑張っていると思ってもらえるような行動を積み重ねている人が評価される仕組みです。

さらに、会社を辞めたとしても、他社で活躍できるスキルを身につけてもらうことも会社の責任だと考えています。人間性を育むだけでなく、部署ごとのスキル要件やAIを活用した価値創出スキルの習得など、市場価値を高める育成プログラムも組み込んでいます。

人は成長することによって、より大きな価値を誰かに提供できるようになります。それがまた、自身の人生を豊かにしていくのだと思います。

「人を想う」は、社員の日常にどう表れているのか

ここまで見てきたように、ダイブグループでは「人を想う」という価値観が、採用や評価、育成といった人事制度にまで落とし込まれています。

では、現場の社員は実際にこのカルチャーをどう感じているのでしょうか。ここからは、地方創生事業の貴舩さん、観光事業の矢口さんにもお話を伺います。

株式会社ダイブグループ ダイブ 観光事業 矢口さん

──入社前と入社後で、会社や組織に対するギャップはありましたか。

矢口さん:正直、ギャップはゼロでした。入社前の面接で佐々木さんが私の育ってきた環境や価値観をじっくり聞いて、等身大の姿を肯定してくださったことが印象に残っています。入社してみたら、周りの先輩方も佐々木さんと同じように「人を想う」マインドを持った方ばかりでした。

貴舩さん:私もギャップはなかったですね。選考の段階から現場の大変さや厳しい現実も含めて包み隠さず伝えてもらえていたので、構えずに飛び込むことができました。

──日々の仕事のなかで、どんなときに「人を想う」カルチャーを感じますか。

矢口さん:日々感じます。たとえば、トラブルが発生したとき、先輩方は一から十まで答えを教えてくれるわけではなく、「最後は自分の思う方法でやってみて。責任は俺たちが取るから」と挑戦させてくれます。自分の成長を信じて任せてくれる姿勢に愛を感じます。

貴舩さん:会社の制度として、若手でも事業提案できる「New-1グランプリ」や「ワンテングランプリ」などの機会も用意されていて、新人でもどんどん打席に立てる環境ができています。また、社内総会では、1年間伴走してくれたメンターとともに新人が登壇して発表するなど、お互いに感謝や称賛を送り合う風土も根付いていますね。

仕組みはもちろんですが、お互いの成長を心から願い合える関係性もあります。ダメなものはダメと言ってもらえますし、本気で挑戦したいと言ったことには「いいじゃん」と全力で背中を押してもらえます。

人のために何かしたいと思ったとき、すぐに提案し、行動に移せる場所なのです。その姿勢を持ち続けられる自分でありたいですし、同じように行動できる仲間をもっと増やしていきたいと思います。

株式会社ダイブグループ ダイブローカル 地方創生事業 貴舩さん

理念が「行動」になったとき、エンゲージメントが生まれる

──理念や人事制度が形骸化せず、現場の日常にまで浸透しているのですね。

佐々木さん:経営陣が何を言うか以上に、一番近くにいる先輩がどんな背中を見せているかがすべてだと思っています。夢を語り、後輩の成長を本気で願う先輩がいるからこそ、想いの連鎖が生まれていくのではないでしょうか。

実際、エンゲージメントサーベイでは他社と比較した場合でも平均値が高く、なかでも「理念」や「人とのつながり」が特に高い数値を示しています。また、OpenWork社が行っている「風通しの良さランキング」でも、人材業界で最高5位という結果が出ています。

「人を想う」という価値観そのものがエンゲージメントを高めているというより、理念が採用や評価、育成、そして日々の社員同士の関わり方にまで一貫して落とし込まれていることが、エンゲージメントにつながっているのではないでしょうか。

エンゲージメントを高めるのは「一貫性」

ダイブグループの組織づくりを見ていくと、「人を想う」という一つの価値観が、さまざまな場面で繰り返し登場します。

採用では、その価値観を持った人を見極める。
入社前には、リアルな現実まで伝える。
評価では、成果だけでなく周囲への貢献や行動を評価する。
育成では、人に貢献するスキルを可視化する。
そして日々の仕事では、挑戦を任せ、必要なときには厳しいことも伝え、互いの成長を支える──。

エンゲージメントを高めるのは、特別な一つの施策とは限りません。理念と制度、そして現場での行動が一貫していることが、「この会社で自分は大切にされている」「ここで成長できる」「自分も誰かの役に立ちたい」という実感を生み、組織とのつながりを育てていくのです。

「人を想う」という言葉を掲げる企業は少なくありません。だからこそ、その言葉を日々の行動にまで落とし込めるかどうかが、エンゲージメントを左右するのかもしれません。経営が言葉として掲げる理念と、現場が日々の仕事の中で実践する行動。その両者が一本の筋でつながっていることこそ、ダイブグループの組織づくりから見えてくる、エンゲージメントを高める一つのヒントなのではないでしょうか。

撮影:大久保愛 文・編集:末松早貴
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