エンゲージメント向上の鍵は、白米食べ放題!? ココナラテックが「同じ釜の飯」に投資する理由

株式会社ココナラテック

朝、オフィスの片隅で炊飯器のスイッチが入ります。お昼が近づくと、今日も10合分の白米が――特別なイベントの日ではありません。ごく普通の、平日の光景です。

これが日常となっているのは、フリーランスと企業をつなぐサービスを軸に多様な働き方を支援する 株式会社ココナラテック。白米が無料で食べ放題になっており、あわせて栄養バランスの整った冷凍惣菜を社員限定価格で購入すれば、あとはご飯をよそうだけでランチ一食分が完成する仕組みです。

多くの企業がエンゲージメント向上を掲げてその施策に頭を悩ませるこの令和の時代、同社が選んだのが「同じ釜の飯を食う仲」という昔ながらの言葉を実践する方法でした。なぜ、白米がエンゲージメントを左右するのでしょうか。その背景にある設計思想と現場のリアルな声を取材しました。

目次

鍵は「白米食べ放題」

まずはこのユニークな制度について、株式会社ココナラテック 取締役 近藤さんにお話を伺います。

株式会社ココナラテック 取締役 近藤さん

――制度の概要からお聞かせください。

近藤さん:毎朝10合炊いた白米が無料で食べ放題というものです。おかずとして栄養バランスのとれた冷凍惣菜も常備し、100円で提供しています。炊飯は当番制で、新卒1年目と2年目の社員がペアになって行っています。お昼時に限らず、就業時間後に行う交流会でも炊いた白米で酢飯を作って手巻き寿司をふるまうこともありますね。

――この制度が始まったのは、どのような経緯からでしょうか。

近藤さん:前社長のご実家が農家だったことが始まりでした。今では単なる食事補助ではなく、当社の福利厚生の一つになっています。

制度の継続をめぐって、転機となったのが2024年です。当社はその年にココナラグループに加入したのですが、その際、ココナラ本体と福利厚生を合わせるかという話が出ました。この制度は当社独自のものだったので見直しの話もあったのですが、エンゲージメントにつながっている部分が大いにあり、継続することに。

以前は福利厚生に記載していなかったのですが、採用における引きの強さも実感として大きく、これを機に福利厚生にも正式に記載するようになりました。

――毎日10合ということは、月の消費量は約40kgほどでしょうか。

近藤さん:はい。費用としては月数万円程度なので、社員約50名に対しての費用対効果は非常に高いと考えています。社員にとっても、このような現物支給のほうが同じ金額を給与として現金で還元するよりもありがたみを感じてもらえているのではないでしょうか。

一人あたりの金額にすれば月500円~1000円程度なので、同じ金額を現金で還元しても瞬く間に消費されて終わってしまいます。しかし、「オフィスに行けば、いつでもあたたかい白米をお腹いっぱい食べられる」という身体的・体験的な効果は絶大です。

グループ会社の新入社員がデスクで菓子パンやコンビニ惣菜だけを昼食として食べる光景を目の当たりにしたことがありますが、食事は仕事のパフォーマンスにも影響するものですし、若いメンバーにとっては公私両面で助けになっているのではないでしょうか。

給与の上乗せ以上に、あたたかい白米がもたらすもの

――確かに若い社員の方たちには食費を抑えられること自体が大きいですし、それに加え、会社からあたたかくケアされている実感を持ってもらえる施策だと思います。

近藤さん:そうですね。また、一人きりでデスクで食事する状況がなくなり、年次や職種に関係なく皆で炊飯器を囲むことで生まれる何気ないコミュニケーションにも大いに価値があります。

私が入社した際にはすでにこの制度は浸透していたのですが、初めてその光景を見たとき、とてもユニークだと感じました。皆が同じ炊飯器に集まってごはんをよそい、おかずとなる冷凍惣菜を「どっちにする?」「ハンバーグおいしいよね」とやりとりする姿は家族のようです。連れ立ってランチに出かけるだけとはもちろん異なりますし、社員食堂とも一味違います。

効果が大きく、最近ではグループ会社にもこの制度を導入しました。

――エンゲージメント調査などにおいて、この制度の効果を実感する場面はありますか。

近藤さん:エンゲージメント調査では「横のつながり(同僚・チーム)」と「縦の支援(上司・マネジメント)」が好数値を示していて、この制度が寄与している部分は大きいと感じています。

また先述したように、採用にもこの制度が一役買っています。給与水準が上がる昨今、就職活動の市場では営業職などは年収の金額差がシビアになりがちですが、この制度をプラスアルファの要素として受け取ってもらえていると感じますね。やはり、「白米食べ放題」は若手に刺さりやすいようです。

中途採用においても、オファーレターの雇用条件記載の下に白米食べ放題について追記したり、オフィス見学の際に「ここでお米を炊いています」と説明したりしていますが、「面白いですね」「いい会社ですね」と言っていただくことが多いです。

「同じ釜の飯」が会社の文化になるまで

――新卒1年目と2年目の方がペアになって運用されているそうですが、「なぜ自分たちがやらなくてはならないのか」というような文句が出ることはないのでしょうか。

近藤さん:すでに新卒文化として定着していて、そのような発言は聞いたことがありません。新卒1年目と2年目の社員でこの白米食べていない人間はいないので、当たり前のようにやってくれていますね。毎年、5名前後新卒が入社するタイミングで当番の役割は引き継がれていきます。

10合分を準備するには5分はかかり、そこで当番同士の会話が生まれます。対面だと緊張してしまうものですが、手を動かしながらだと話しやすく1on1よりいい雰囲気で会話できるようですね。

――代々受け継がれる部活の伝統のようですよね。うまく運用できているのだと思いますが、なにか課題点はありますか。

近藤さん:月末になると、冷凍おかずが足りなくなってしまうことがあります。そんなときは連れ立って外に食べに行く姿も見られます。以前、お米のストックがなくなって米騒動になったこともありましたね。その際は、役員が急遽買いに走りました。

また、稀に冷凍庫がきちんと閉まっておらず、ストックしてある冷凍おかずが溶けてどろどろになってしまうこともありますが、そういったトラブルの際も自然に皆で協力する関係ができていると思います。

ランチタイムに見えた制度のリアル

実際に、ランチタイムの様子を見学させてもらいました。

お昼時になると、炊飯器の前に人が集まってきます。必ずしも誰と食べるかが決まっているわけではなく、たまたま同じタイミングで居合わせたメンバーと会話をし、その流れでともにテーブルを囲むことも。営業に人事、カスタマーサポート……部署や年次を問わず、話を弾ませながら食事を楽しむ姿が、そこにはあります。

制度を利用する社員の方々からは、こんな声が聞かれます。

「私が新卒入社した当時、すでにこの制度はありました。当時は初任給の振込が5月末だったのですが、この制度のおかげで給料日まで耐え凌ぐことができました。お金のない若手にはありがたい存在だと思います」(キャリアコンサルティング部)

「ランダムランチ制度で外へ行くこともありますが、オフィスで食べるのが基本ですね。おかずの種類が多くて飽きないですし、バランスも良くて健康的です」(経理)

「産休明けに久しぶりに出社した際も、この場があることでスムーズに交流することができました。『ここに来たら誰かと話せる』という安心感があります」(人事)

「次の会議の話をするのはもちろん、仕事に関係のない趣味の話題で意気投合することも多いです。盛り上がって会社で行う部活動の立ち上げにつながったこともありました」(営業アシスタント)

ここから見えてくるのは、白米の価値が「食費を抑えられる」という一点だけではないこと。食べる場所がそのまま、人とつながる場所になっているのです。

安心して誰かと話せる環境と、部署や役職を超えて自然に生まれるコミュニケーション――それこそが、ココナラテックのエンゲージメントを静かに支えています。

白米の先にある、エンゲージメント

ココナラテックの「白米食べ放題」は、一見するとユニークな福利厚生です。しかし、その本質は制度そのものより、それによって生み出される “場” なのです。

炊飯器の前に人が集まり、部署や年次を越えて会話が生まれる。新卒社員が準備する時間にもコミュニケーションが生まれ、久しぶりに出社した社員にとっては「ここに来れば誰かと話せる」という安心感にもつながる――同社が提供しているのは、白米そのものではなく、人と人が自然につながるきっかけなのかもしれません。

エンゲージメント向上というと、研修や表彰制度、社内イベントなど、いかにも施策と呼べるものを考えがちです。しかしながら、日々の何気ない行動や習慣のなかにこそ、社員同士の関係性や組織文化を育てる余地があります。

「同じ釜の飯を食う」という昔ながらの言葉を、現代のオフィスで実践するココナラテック。そのユニークな取り組みは、エンゲージメントを高めるために必要なのは必ずしも大がかりな制度ではなく、人が自然に集まり、話したくなる環境をつくることなのだと教えてくれます。

撮影:高木亜麗 文・編集:末松早貴
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